私は患者同士の会話の中から生まれるグループダイナミクスを信じる。アルコール依存症患者の会、アルコホリクアノニムス(AA)は、患者のグループダイナミクスにより依存症でありながら飲まなくてもすむようになるというスピリチュアルグロースが得られることを目標としている。
難病を抱えた患者さんも同じようにグループダイナミクスによりスピリチュアルペインから起ち上がれるのではないか。それは患者の力をエンパワーするのに患者の力をつかうという新しい発想だ。肝臓病患者も肝臓病教室の最後に行うグループワークで何だか元気がわくという。肝臓病だけでなく、そしてできれば疾患横断的に難病患者が集まれば、より大きな力になるのではないか。
その様に考えていたときに知り合ったのが、肺高血圧症患者のSさんだ。病気なのに元気一杯のSさん。そんなSさんと意気投合し、それでは難病患者の「ごった煮患者会」をやろうということになった。
10月16日初めての会を慶應大学信濃町キャンパスの202教室で開催した。計32人の患者さんやその家族、支援者、医療者学生があつまり、「ごった煮会」は開かれた。私の師であるキッペス教授も参加してくれた。
思った以上に会はスムースに進み私は大成功であったと思う。まだまだ改善点はあるが、たしかな手ごたえを感じた。
患者さんやその家族が難病にであって、様々な困難に出会ったことを話し始めた。どれ程つらかったのだろうか、ご本人以上につらさを解ることはできないがそれでも同じ様に難病を抱えたものであれば真剣に共感をしながら聴くことができる。そして、自分の体験の中からのアドバイスもできる。
「どうして、こんな身体の私を生んだのよ」とわが子に打ち明けられた患者の母親のつらかった体験を話されると、それと同じような体験をさせたという別の若い患者から涙がこぼれる。母親だけにそんな悩みが言えるのだと、伝えられ得るのは実の子ではなく、同じような体験をさせてしまった同病を抱えた娘さんだ。
こんな病気を抱えて、子供ももてないと言う悩みを打ち明けられると、喘息の患者さんは私たちの若い頃は私の病気もそんな病気であった。今は治療法の進歩により喘息ではそんな悩みを持たなくてもよくなってきたと語る。これは同病の患者では言うことのできない情報だ。
病気を特定せずに、慢性の難病患者を対象にグループワークを行うことのメリットは確かに存在する。そして、難病をかかえる患者の悩みは同じ病気でなくても共感をよびおこし、新たな視点を提供できる。
参加した多くの患者さんは少し明るい顔になって帰られた。
第1回の「ごった煮患者会」は手ごたえが感じられ、とりあえず成功であったと思う。
来年1月には第2回目をと考えている。よいモデル作りがこれからの仕事だ。よいモデル作りができればそれを拡げていきたい。一歩一歩の前進だ。