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  2006/05/28 イギリスの医療の質は高いか低いか

同業のななこ先生が話題にしてくれてそこについたコメントを見ていて思った事。

果たしてイギリス医療の質は高いのか低いのか。

どちらかというとマイナーなことでぶつぶつ文句をいっているようなエントリーが多いので、イメージとしてはイギリスの医療って質が低そう、という感じを受ける方が多いと思うのですが、NHSのお役所的管理の待ち時間や書類操作やシステム的な事etcをここで横に置いておいて

「医者の質」についてだけ注目してみると答えは
「イエス」
医者の質は高いと思います。

比較のため、私のような卒後10年目の整形外科医を例にとってみると

**私(日本)の場合**
卒後整形外科医局に入局

→1年整形外科で下働き(点滴、薬の処方、包帯交換、手術の助手など)

→麻酔科、救命救急に半年づつローテーション

→3年目より外病院とよばれる大学病院以外の小規模、中規模病院の外回り

→6−7年目に大学にもどってきて専門医試験

→その後大学院で研究職

→現在に至る

わけで、3年目よりの大学病院以外の小規模、中規模病院の外回りの時代にはその病院によって指導してくれる先輩の先生によってはとてもいい研修期間を過ごせるものの、そうでないと毎日外来診察で薬の処方やリハビリへの紹介や大学病院への紹介やそういったルーチンの仕事であっというまに数年が過ぎる、という結果になってしまいます。 1〜2年ごとに病院を変わるので指導医の手術の助手をして術前術後管理を主に任されるものの、自分が執刀医になる機会は限られています。私自身を含めて自分が「執刀医」となった大きな手術の症例は少なくて100例〜多くて500例ではないでしょうか(私の場合は200例)。


**イギリスの場合**

卒後
→1年間各科3ヶ月ごとのローテーションで下働き(点滴、薬の処方、包帯交換、手術の助手など)(PRHO)

→2年目~4年目外科系に進むか内科系に進むかそれともGPになるかを決め、外科系(整形外科)に進もうと決めた場合は関連のある外科系で研修医(SHO) (この時点では手術の助手レベル)そしてこの時点で外科または内科専門医試験のようなものを受けたり、必死でworkshopのようなものに参加したりして準備します

→レジストラーになる
 整形外科レジストラーになると、整形外科トレーニングをきっちりしっかり受けます 指導医のもと、執刀医として1年間に200例程度の執刀をし、6年トレーニング終了時には約2000例(私の10倍)の症例を執刀している計算になります。また指導医は自分が受け取った手術の基本のすべてをしっかりこの後輩に受け継いで、レジストラーが一人前になるまでかわるがわる面倒をみるのです。

→試験を受け、コンサルタントになる

日本とイギリスの卒後10年目の整形外科医を比較するとイギリスの整形外科医はコンサルトレベルで、すでにすべてコントロールできる権利をもっています。日本では講師レベル、ある程度責任をもって患者さんを治療しているものの、教授、助教授の意見が優先されるレベルでしょう。

いちばん大きな違いは「レジストラー」というこのポジションではないでしょうか。

整形外科医レジストラーには整形外科医になりたいひと全員がなれるわけではありません。多分その競争率は1:10〜1:20くらいでは? 大学時代の成績、試験の合否、ACLSなどを含む技術の習得、AOコースなどを含むworkshopへどれだけ参加しているか、paperをどのくらい書いているか、などなどかなり厳しい審査のあとに限られた人だけが「整形外科医」になれるわけです

いったんレジストラーになると手術症例数が1000単位を越える、というこの優遇は、GPの存在が大きいのです。日本のように外来で毎日のように診断、処方、包帯交換、術後のフォローをする必要はありません。例をあげれば股関節手術が必要と判断された患者さんの合併症の管理(血圧やそのほか内科的疾患)はGPがすべて内科への紹介なども含め管理してくれるうえに、術後退院した患者さんのフォローはGPがやってくれるので退院後6ヶ月と3ヶ月に専門医外来があるだけです。

ちょっとだらだらと書いてしまいましたが、つまり、イギリスでは専門医/GPとしっかり役割分担が決まっているので、必然的に専門医の質が高くなっています。日本では整形外科医、といってもGPのような仕事をしていることが多くないですか? 気がつくと、「整形外科医看板のなんでも屋」になってしまった自分。それはレジストラーという整形外科医という専門医を育てるシステムが日本に欠けているからだと思うのです。

多くの先輩たちが10年目くらいを過ぎると「整形外科GP」のような「開業」をしてしまうのもそのせいではないかと思うのです。この「開業」のシステム。XX先生が開業するから医局をやめるって、ときくたびにXX先生があれだけ手術がうまかったのに、と残念な気持ちになったことを思い出します。開業して、おおきな手術をこなしていくひとはかなり少ないでしょう? 無駄が多いと思いませんか?

こちらのコンサルタントは手術のうまい、下手は「症例数」だとずばり、言い切っています。そうだとすると、整形外科医の質について話すならば役割分担がきちんと決まっていない日本の混沌としたシステムではイギリスの医者の質に追いついていないのではないかと思うのです。

イギリスのほうではこうやって「整形外科医」の数を無鉄砲に増やさないので専門医に見てもらうまでの待ち時間が長いのですが、いったんそこまでたどり着けば「質」は保証されています。日本では外来にいって「整形外科医」に見てもらったとしてもどのくらいの経験のある医者にみてもらったのか、よくわかりませんよね。

長くなりそうなので続きはまた次回。

投稿者 ninotchka : 17:49 | コメント (7) | トラックバック (0)
  2006/05/28 男らしさ 女らしさ

男らしい、女らしい、という形容詞はいつもあまりにもあからさまで
女のくせに、といわれるようなことを山ほど抱えている私には村八分のような気分になったもの。つい最近、男らしさ、女らしさの境界は消えてきているのではないかと思うようになった。ハンサムウーマンという言葉がうまれるくらい女がマスキュリンなのはかっこいいことでさえある。女は「(フェミニンな要素の)やさしい男」を好むようになってきている。

患者さん10人中10人は男、という「男らしい」骨折がある
中手骨第5骨折=ボクサー骨折 (写真)

5metacarpal.jpg

酔っぱらってけんかして壁を(相手を)パンチで殴りました
なかには、いや、酔っぱらってなかった、というひともいて、それって余計に怖いかも、と心で苦笑い。

外来で診断するたびにその男の、若気の至りで言葉よりも手がでてしまった瞬間の、その証拠をまるでつかんでしまったような、そして私は若かった頃、その暴力性をとても嫌だと思ってた。

時代の流れなんだろうか、それとも私が年をとったから?

男ってそういうところあるんだよねー、とちょっと理解を示す事ができるようになった。怒りを表すことができずににやにやと悪質ないたずらに走るよりも、こぶしを握りしめて戦う姿勢をとるそんな男がほろびませんように、なんてね。そしてそんな単純さが若さの証拠でもあって、そんな男も10年もすれば怒りをコントロールする術を身につけてしまうのだから。


*是非この方このエントリーを読んでみてください(櫻花 男でもあり 女でもあり)


*治療はほとんどのケースは手術的治療を必要としません。ポッキリ折れて90度角度が曲がっていたとしても指の関節が少しおかしくみえるくらいの支障しか残らないからです。

投稿者 ninotchka : 02:48 | コメント (3) | トラックバック (0)
  2006/05/27 整形外科医を目指す医学生へ

...といってもジョークです
Doc roomの壁に貼ってあったので。

Orthopaedic Jokes
クリックで拡大。

投稿者 ninotchka : 04:42 | コメント (2) | トラックバック (0)
  2006/05/27 ポケットベル

ポケットベル=ペイジャー (pager)が重いのです
携帯よりも重いのです
ピピーツってすごい勘に触る音で鳴ることしか能がなくて
充電式でなくて乾電池だし
表示窓も小さくてみえにくいし
何の機能もありません
pager.jpg
手書きで番号が貼ってあったりして(笑)

例えばドクターが院内にいるのかどうかの表示にもならないし
pageした先のドクターがOnしてるのかOffしてるのかもわかりません

もう!日本は院内PHSやPDAの時代なのにね。

同僚が一度このpagerをなくしてしまい
病院側にその旨を伝えたところ
「200ポンド(=4万円)かかるんですよ!」 It costs 200 pounds
と怒られたそうですが...

そんな金額を払う病院側も病院側だと思うんだけどなあ...


投稿者 ninotchka : 04:15 | コメント (6) | トラックバック (0)
  2006/05/26 白衣

新しくできた外傷センターをに6ヶ月勤めた後、研修先が変わり、古くからある病院に移動しました
そこで真っ先に気がついたことはこの古い病院ではまだ白衣着用のドクターが多いこと。

白衣の話題はメリットのこちら

私は白衣賛成派です
ポケットがたくさんあって機能的だし、汚れたらすぐ洗えるし、合理的。

日本からいくつか自分の白衣を送ってもらったのですが
こちらではみかけないこのタイプは
同僚の話題をさらいました
chibahakui.jpg

'Hey, that's cool'
という感じ。
これは千葉大学でデザインされたもの?なのか「千葉白衣」と呼ばれる白衣なのですが
私の出身の大学の売店で手に入れられたのでけっこう女o医大で見かける頻度も高いかもしれません

私は日本では白衣+白衣上着+白衣ズボンと全部取り替えるのが心地よかったのですが、そのタイプはアメリカやドイツに多いらしいです(!)
イギリスではシャツ+ネクタイが基本です
どう考えても動きにくいし、診察時にはネクタイがブラブラ邪魔だし
スーツのズボンなんてそんなに頻回に洗えないのになあ
同僚にそういってネクタイからの脱出をプロパガンダしたのですが聞き耳持たず。
そういう’頭が固い’ところはイギリスらしい、のですね。

投稿者 ninotchka : 04:36 | コメント (2) | トラックバック (0)
  2006/05/19 申し送り

ー以下日記から抜粋ー

September 2005

イタリア人の患者さんの家族が私に文句を言いにきた
「イタリアの病院はchaotic(カオス:混乱)だけど、イギリスの病院はもっとchaoticで私の父(患者さん)に次にいつ何が起こるのか誰も知らないのよ」イタリア人らしい文句のいい方。イギリス人はイタリア人よりも文句を言わない、のが原因か?

文句を言いたい気持ちはわかる。ここスコットランド最大規模の外傷センターはまだ新しくてほんとに手術の予定も日ごと、時間ごとに変わるから予定していたことができないことも多い。話をよくきいてみると、ナース側にも問題が。日勤のナースに伝えたことが、夜勤ナースに伝わっておらず、そしてまたその夜勤から日勤にも伝わってないと。どれだけ細かいことを言っているのかはちょっとわからないけど思い当たる節がある。

ナース(ヘルパーさんを含む)の申し送りの図。

message

病棟のカルテ室での毎朝の風景。
その日の勤務のナースはこの部屋に集合し、夜勤のナースが録音したテープを流しみんなでメモをとりながら聴いている図。カルテが急いで必要な時など間違ってズカズカとドアから部屋に入ってしまうのだけど、最初はこれが申し送りの場ということに気づかなくて、勉強会か何かだろうと思っていた。

ナースの中には私のような外国人労働者もたくさんいて、一昔前の質の悪いテープに録音された声を聞き取るだけで申し送りになるのだろうか? 聞き取れなかったら? 質問したいことがあったら? 言い忘れたことの挽回の余地はあるんだろうか? 私のような急ぎの用事のある人間が出入りしてバタバタとドアを開け閉めしていくのは気にならないのだろうか?

これでは患者さんの記録がメモになり、日替わりで消えてゆき、人間らしいケアからは遠ざかっていくのではないのだろうかーほんとうに心配。

投稿者 ninotchka : 18:06 | コメント (4) | トラックバック (0)
  2006/05/19 担当医だから


ー以下日記から抜粋ー

25 August 2005

日本でもイギリスでも患者さんはだいたい担当医制(受け持ち医制)でだいたい「講師クラス(コンサルタント consultant)、指導医(レジストラー registrer)、研修医(SHO)」が3人一組になって講師クラスの患者さんを受け持ちで見る。だから整形外科病棟のベッド数が50でも200でもだいたい10〜20人前後を受け持ち、はっきりその担当が決まっているので他の班の患者さんのことはあまり知らないままで過ごしてしまうことが多い。 

日本とイギリスの違いは当直(on-call)になったとき。

典型的な日本例では、自分の担当の患者さんの具合が悪くなった、または急変した、というときには担当医が1から10まで指示を出し、面倒を見て、何かがあったら真っ先に呼ばれる。当直のドクターがいても関係なく泊まりそれが「担当医だから」「患者さんのことをよくわかってるから」「あたりまえ」という空気だった。 そういう1から10までの責任を通して学ぶこともたくさんあった。

典型的なイギリス例では担当以外の患者さんの具合が悪くなった、または急変したという場合も当直医(on-call)がすべて診る。整形外科だから内科的な疾患の場合は内科on-callを呼ぶことはあっても「担当医」特に研修医レベルの担当医を夜中に呼び出すことはない。翌日コンサルタントやレジストラーを含めた担当医に報告はするものの、患者さんの家族への説明も全部しなくてはいけない。「担当医ではないので」というような言い訳もまったくなし。一度も診察したことのない患者さんの急変だったりすると読めないカルテ(medical notes)を解読し、状況を把握し、素早く行動しなくてはいけないのでかなりキツい。ベッド数が150床規模になると当直のたびにそういった「急変」がどこかで起こる、ひとりでは前もって把握しておくことはほぼ無理。どうしても手に負えない場合は担当チームではなく自宅で待機しているon-callのレジを呼び起こす。

最初慣れない私は急変時に思わず担当医に電話をして、せめて報告でも、という気持ちをなかなか捨てられなかったけれど、考えてみればon-call以外、研修医の同僚たちはだいたい酔っぱらっているに違いない。意味なし。患者さんの家族もデータを示してきちんと説明できれば「担当医を呼べ」という態度をとるひとはいない。

思い返してみると、日本で当直でない(on-callでない)日でも患者さんの急変で担当医としてよばれたことは何度もあった 旅行に出かけていない限りだいたい20〜30分以内にかけつけられる状況にいたような気がする。一度だけ、かなりの量のアルコールがはいっていて自転車で急いで駆けつけたら到着したとたん戻してしまったことがあってあの恥ずかしさっていったらほんとに忘れられない。研修医は1年365日研修医、というような無言の圧力。それは今は変わってきているんだろうか、それともこれもイギリスと日本の違いなんだろうか。


投稿者 ninotchka : 02:46 | コメント (4) | トラックバック (0)
  2006/05/16 股関節手術の待ち時間(イギリス)

今朝のBBCニュースのトップ記事はいつも話題にことかかないNHS(Natianal Health Service:国民健康保険のようなもの)のこと

ヨーロピアン法廷での判決 「イギリスのNHSは患者さんの治療の待ち時間が長過ぎて患者さんがフランスなど国外で治療を受けた場合のコストを負担すべき」

ケースは75歳のYvonne Wattsさんという女性 イギリスでの待ち時間が長過ぎたために人工股関節置換術をフランスで受けた£3,900 (80万くらい)(*1)をNHSに請求できるかどうかという争点で答えはYESとでたわけです

このケースの詳しいことはわかりませんが人工股関節置換術を受けるのにオフィシャルで7〜12ヶ月のwaiting listといわれています しかしー実際は私が目にしてきた多くのケースは15〜18ヶ月でした
どこから「待ち時間」とするかも問題な訳です
典型的な例をあげると
「股関節が痛い」
とはじめに気づき、まず家庭医GPのところにいきます
レントゲンなどの施設もないしGPは整形外科医ではないので診察もろくにないまま
「とりあえず痛み止め出しときましょう」
と数ヶ月様子を見ます
それで痛みがあまりに変わらない場合GPのところにもどって整形外科に行きたいと要請します。するとGPは整形外科医コンサルタント(*2)に手紙を書いて送ります(これが1週間くらい)。整形外科医コンサルタントの秘書さんはGPから手紙を受け取ると整形外科コンサルタントの外来診察に予約をとり、予約をとったことを手紙にして患者さんとGPに送ります(これが2〜3週間くらい)。患者さんが手紙を受け取ってみるとだいたい予約は6ヶ月先のいついつ、となっているわけです。この時点ですでに6ヶ月〜1年くらいたっているわけです。

待ちに待って整形外科医に会いにいく。するとレントゲンをはじめてここでとられて診察されて疑問がある場合は他のテストを含めて数ヶ月。ストレートに人工股関節の手術の予約をとりましょう、といってもそれに7〜8ヶ月プラスということになるわけです。

私がコンサルタントについて外来にいたときに初老の女性が股関節の痛みで診察にきていて初診まで1年待ったといっていました。その女性にコンサルタントが手術はだいたい6〜8ヶ月先と説明したとたん、涙がこぼれていました。「もうこれ以上待てません。最近は外出も出来ないようになってきた」と。

想像を絶する悲惨な状況ですが、どこまでこの判決で改善してくれるのやら。いやはや。

ーーーーーーーーー

*1 人工股関節の手術のコストはヨーロッパ、イギリスでは日本に比べ安いそうです 人工股関節そのものが輸入だったり税金だったりせいなのでしょうか 

*2 整形外科医のコンサルタントはイギリス全土で5000人だそうです コンサルタントというとだいたい「教授」レベルと同じと考えてもいいのかもしれませんがすべての患者さんはコンサルタントのもとに治療されるという原則を考えると少なすぎ。

投稿者 ninotchka : 18:14 | コメント (2) | トラックバック (0)
  2006/05/14 最悪のシナリオ

いつも冗談ばっかりいっていて優良健康児の友人から真鍋かをり調のテキストが届きました

「なんかさ〜最近疲れると思ったらヘモグロビンが6でオイラ入院になっちゃったよ (゜▽゜)」

ええええええええええ!!Σ( ̄□ ̄;

慌てて返信を打つも返事なし。携帯にも自宅にも電話するも返事なし。ヘモグロビンの値は血液検査をして貧血の検査に使うもので通常は女性で12〜13はあるので彼女の場合は半分しかないいうことになります。私のような整形外科の範疇ではヘモグロビンの値を気にするのは特に術後。股関節のような大きな関節の置換術後でも通常の12〜13から6まで下がるには大量出血。6まで放っておいたらドクターはもう真っ青、患者さんは真っ白でシーツと見分けがつかないくらいになるはず。だいたい8ぐらいで輸血を開始しています。

私は現在staff homeという病院の敷地内にある医療関係者用の寮に仮住まい、周りには内科のコンサルタントもいます。友達がヘモグロビン6で入院になっちゃったんだけど、いつもすごい元気な子でさ、トライアスロンとかマラソンとかしてて、考えられないんだけどなんでかなあ〜とカジュアルにきいてみると

1、生理が重い heavy period
2、鉄欠乏 (食事、ベジタリアンとか)iron deficiency
3、胃腸からの出血 
4、白血病

とずばっと答えが返ってきました。彼女、やせていて小柄でとても生理が重そうにはみえないし、ベジタリアンではないし、出血だったら気づくだろうし、、、えーもしや白血病かと。一度思い始めたらもう頭の中は最悪のシナリオ。悲しそうに泣いているベッドの彼女まで見えてきます。心配で心配で彼女の彼氏にまで電話をかけてしまいました。

そうやってやっと捕まった彼女、電話の向こうで笑い転げています。

「やだ〜また母親からこうるさい電話だと思って携帯オフにしてたんだよね〜ごめんごめん。え〜入院?自己退院してきちゃったよ、だって輸血するっていうんだもん。日本だったらまだいいにしてもこっちで輸血受けるのはねえ、ちょっと。いや〜マラソン仲間ではトレーニングし過ぎで貧血になること有名で最初っからこれは貧血だなあってわかってたんだよ。全然走れなくってさ。でも最初、GP(家庭医)にいって私貧血だから血液検査してくださあいって頼んだのに全然とりあってくれなくて困ったよ。疲れるのは妊娠しているせいでしょうって(ぎゃはは)。妊娠検査をして陰性なんでやっとしぶしぶ検査してくれて、そしたら次の日慌てて電話くれて、急いで病院にいってくださいって。病院でもトレーニングし過ぎで貧血って説明しても信じてもらえなくて、今度内視鏡とか血液内科受診とか。え。私?大丈夫大丈夫。おかげで4週間のoff-sick(病欠)もらえて、ガーデニングしてるよ〜。鉄分もとってるし。これで回復したら私早いよ〜」

いやはや。
スポーツドクターならきっと常識なのかもしれませんが、私も(GPもきっと)そこまで貧血になるとは知りませんでした。

そんなわけでほっとしてさきほどのコンサルタントに報告すると、一言。


「医者はすぐ最悪のシナリオを考えたがるからなあ」

投稿者 ninotchka : 17:33 | コメント (0) | トラックバック (0)
  2006/05/12 モートン病

典型的に中年の女性で足が痛い、と外来で。
まず考えなくてはいけないのは外反母趾ですが
案外多いのがモートン病。

このモートン病 Morton neuromaですが
ウイーンのMorton先生によって記述されたのがはじまり。
足の指(中足骨)と指の間で神経が挟まれて、痛み、
neuromaという神経のこぶをつくってしまうものです

Morton's neuroma.jpg

このモートン病は足のアーチのくずれと関係していて
つまり足がだんだん扁平になって
「幅広の靴でないと」と思うようになってくるその年齢あたりが危ないわけです

足のアーチをキープするためには
足じゃんけんとか ビー玉拾いエクササイズとか
足の運動がすすめられています

このモートン病、イギリスで研修をはじめてからもう10数件の手術を見ました
日本で研修していたときには1〜2件だったから
こっちの国民には多いのでは、と内心、びっくりしています

日本では家に帰ると靴を脱いで、中には靴下も脱いでくつろぎますよね
だから意識しないで足の運動をしているのかも

日本を訪ねたことのあるこちらのイギリス人たちは口を揃えて
「スリッパ」の習慣に驚いているんですよ
トイレスリッパとかお風呂場スリッパとか
スリッパの履き脱ぎ
そんなことも影響しているのかもとか思ったり(笑)

いや、外反母趾も下駄を履いていた時代にはきっとなかっただろうと思うので。

ちなみにもう少し専門的な話をするとモートン病の手術的治療ですが
(ステロイド注射で軽快しない場合)
痛みが足底にあるので足底からincisionという外科医もいますが
第1のポイントは足背から(患者さんの術後の負担が少ない)

中足骨間にlong incisionをして
中足骨間のthe deep transverse metatarsal ligamentをきちんと切除します
 (この切除だけで痛みが軽快するというレポートもあり)

第2のポイントはここで足底から指でneuromaをpush upすると
足背にneuromaがpop-upして同定しやすくなります
ここでneuromaを神経ごとexcision

local anaesthesia+tourniquetが必要です

2007.8.10 追記しました
モートン病(神経腫)その後

2008.3.31 追記しました
モートン病の診断

投稿者 ninotchka : 20:28 | コメント (481) | トラックバック (0)

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